2022年12月23日
未来を構築する①:ウエスタンデジタルの4IRトランスフォーメーション

第4次産業革命(4IR)は、生産性の最適化のみに留まらない点で、過去の産業化時代とは一線を画しています。この新しい時代では、製造業とグローバル経済の体系的な変化を触発する分野横断的な進歩を遂げているのです。モノのインターネット(IoT)、機械学習、ロボティクス、AIなどさまざまな新しい技術の融合によって誘発された4IRは、サプライチェーンから労働力に至るまで製造業を隅々まで変革するデジタルトランスフォーメーションを先導しています。
4IRを推進する技術の多くは、大規模に実装される膨大なデータに依存しており、そのデータは保存して詳細に分析する必要があります。ウエスタンデジタルは業界をリードする技術とデータに関する専門知識を活用する機会をここに見出しました。自社の製造事業全体に4IR技術を実装しています。

製造現場からのデータ

この新しい産業化時代の技術は、膨大なデータによって牽引されています。世界中に広がるウエスタンデジタルの工場は、HDDとフラッシュの両製品を製造しており、その製造現場はデータを収集し、それを基に行動を起こすのに最適な場所でした。米国からタイに連携する製造ラインでは、常時データを収集する数百ものIoTセンサーとカメラが設置されています。フロアのすべての機械部品、すべてのテスト、およびすべての作業者がデータポイントに相当し、保存・分析されます。
ウエスタンデジタルでデータサイエンスおよびデジタルトランスフォーメーション担当シニアグローバルディレクターを務めるGeorge Ng(ジョージ・ング)は、同社のタイにあるHDD工場での仕事について次のように述べています。「私たちは主にデータを収集し、それをビジネス価値に変えるために分析しています。そのデータは、組み立て前の1万5,000のデータポイント、そして組み立て後の1万5,000のデータポイントに、全世界のオペレーションで収集された7ペタバイトのデータが加わったものです」。

「そのデータは、組み立て前の1万5,000のデータポイント、そして組み立て後の1万5,000のデータポイントに、全世界のオペレーションで収集された7ペタバイトのデータが加わったものです」。

彼はデジタルトランスフォーメーションに焦点を当てたグローバル分析チームを率いていますが、その前にはタイ工場で主にデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいました。彼にとっては、これまで工場の現場で失われていたデータを取得することこそが、分析の精度を向上させ、ひいてはパフォーマンスを向上させるための鍵を握っていたのです。
George Ngは、4IRとそれ以前の産業化時代の違いについて、次のように語っています。「10年前に比べて、センサーもカメラも進化して安価になりました。すべてのマシンにセンサーが付けられると、より多くのデータを収集してより大きなモデルを構築し、より効果的な機械学習が可能になります」。
「我々人間だけでは決して分からないことでも、これらのテクノロジーがあれば一気に進展します。おかげで、これまで見たこともないような製品の歩留まりを達成できるようになりました」と彼は述べています。

調達から納品まで

機械学習は彼の仕事の中核であり、4IRの技術的シンフォニーのもう一つの部分です。IoTセンサーが収集したデータによって、機械学習アルゴリズムが訓練され、人間が望んでいたスピードをさらに超えてデータを処理します。そうして得られたインサイツは、製造に必要な部材を含め工場全体を網羅します。
「これらのデータにより、たとえば材料計画を推進することができます」とGeorge Ngは述べています。「同じ製品を作るために使う材料を減らすことができれば、調達する量を減らし、エンドユーザーのコストを下げることができます。その結果、ユニットの出荷頻度に好影響を与え、それがトラックや倉庫にも及ぶことになります。つまり、調達から配送まで、ほぼすべてに好影響が及ぶのです」。
ウエスタンデジタルのアドバンストアナリティクスオフィスでアドバンストアナリティクス担当ディレクターを務めるDávid Gyulai(ダーヴィド・ジュライ)は、当社のサプライチェーンにおける輸送の最適化に取り組んでいます。彼が注力しているのは、製品を輸送する必要性を最小限に抑え、製造に関わる高コストの部分を最適化することです。
「私たちの最初のプロジェクトは、過去のデータに基づいて集荷時間を最適化するもので、機械学習を利用して貨物の輸送時間を予測しました。そのようにして、データに基づいて貨物を出荷するのに最適な日を割り出しました」とGyulaiは述べています。グローバルなサプライチェーンマネジメントでは、時間がすべてに影響します。輸送を高速化すれば、燃料費の削減、大気中の排出量の削減、および混乱発生時の回復力の向上が実現します。
「現在は予測に取り組んでいます。本質的には未来を予測しようとしているのです。需要と物流データを見ながら、製品を届けるための最善の方法を考えています」とGyulaiは語っています。
彼の説明によると、ウエスタンデジタルのサプライチェーンは非常に複雑で、工場、倉庫、配送センター、世界中の多くの顧客などのネットワークノード間で、多くの輸送を必要としているとのことです。彼は「全コストの中で輸送に関わるコストが最大になる可能性があるため、供給業務をより迅速、柔軟、効率的、かつ持続可能にするモデルを構築しています」と述べています。

テクノロジーが製造現場を支配する

工場において、新しいテクノロジーはさらに新しいテクノロジーと運用を生み出し、作業員と機械のワークフローを変革します。ウエスタンデジタルのデータ分析エンジニアリング、グローバルオペレーション担当ディレクターであるCarmen Ng Soo Fun(カルメン・ング・スー・ファン)は、当社のグローバル製造拠点におけるスマートファクトリーの実装を専門としています。
「私たちのチームは、工場に最新技術を導入しようとしています。」とFunはマレーシアからのビデオインタビューで語っています。彼女は、工場でその技術をどのように活用し、業務を改善しているかを説明してくれました。

「それは、新たな問題を探り出し、迅速に対応するための技術です。リアルタイムで推論とチェックを行っています。機械と部品をリアルタイムで監視し、必要に応じて対処しています」これにより、工場の運営が合理化され、ダウンタイムが最小化または解消され、工場内の労働者は繰り返すだけではない、より有意義な作業に専念できるようになります。コンピュータビジョンは、そのプロセスの一例です。
「コンピュータビジョンは、人間の目をデジタル化したようなものです。人間が目でできることならコンピュータでもできます。たとえば、検査もコンピュータビジョンで行えます」とFunは語っています。作業員が工場のラインを何時間も見つめて、不具合が発生している場所を見極めようとする作業などは、コンピュータが代行してくれます。したがって、作業員は設備の修理など、より重要で複雑な作業に取り組めるようになります。
Funのプロジェクトの中には、もっと未来的な取組みもあります。拡張現実(AR)もそのうちのひとつで、設備や機械上にリアルタイムで指示を映すことで学習を強化したり安全性を高めようとしています。
彼女は次のように語っています。「ARを使用すると、情報が目の前にポップアップして表示されます。したがって、パーツ情報を得たりトレーニングをする際にPCを見る必要がなくなります。そうすることで、労働の安全性と効率性が向上します。」たとえば、ARを使って複雑な知識を直観的に分かる形に変換し、機械の内部動作を示すことで、ラインを止めたり減速したりして生産能力が落ちるのを避けることができます。

未来への青写真

ウエスタンデジタルの工場全体におけるこれらの4IRの進歩は、会社の将来にとって欠かせません。自動化されたオペレーションとデータ駆動型の意思決定の基盤は、ビジネスの価値を高めると同時に、製品と人材も強化します。
「通常、作業員が行っている反復作業は自動化に置き換えられます」とFunは述べています。「そうすれば、労働者はスキルアップして新しい分野で働くことができます。しかし、工場のすべてを維持するためには、必ず人間が必要になります」。
Funも知っているように、自動化は人から仕事を奪うものではありません。人を変革するものです。熟練した労働力は常に必要です。ウエスタンデジタルは、従業員のスキルアップと4IRの未来に向けた準備に引き続き投資し、グローバルな製造オペレーションの未来の青写真を提供します。
テクノロジーに牽引され、日常業務からマクロ経済まで、あらゆるものを変化させる第4次産業革命は、すでに新たな道を切り開いています。グローバルなオペレーションとサプライチェーンを最適化することは決して簡単なことではありませんが、4IRの可能性は大きく広がり続けています。ウエスタンデジタルが進めていることは、4IRがひとつのデータポイントで一歩ずつ未来を構築しているほんの一例なのです。

※「未来を構築する」は全3話で構成されます。第2話「マイクロファクトリーでものづくりを再考する」はこちら

著者: Thomas Ebrahimi
※Western Digital BLOG 記事(SEPTEMBER 1, 2022)を翻訳して掲載しています。原文はこちら

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