2021年10月22日
地場産業としっかり向き合い、得手を発揮
2位、ウエスタンデジタル賞:鳥羽商船高等専門学校

ディープラーニングコンテスト2021(以降、DCON、主催、一般社団法人日本ディープラーニング協会)は全国高等専門学校を対象に、高等専門学校生が日頃培った「ものづくりの技術」と「ディープラーニング」を活用した作品を制作し、その作品によって生み出される「事業性」を企業評価額で競うコンテストです。ウエスタンデジタルは、この「ものづくりに密着した『現場感のある』『実践的な』ディープラーニングの活用によって、『社会課題解決に取り組む』」コンセプトに共感し、協賛することになりました。 第二回目の開催となった「DCON2021」は2021年4月に最終選考会(本選)が行われ、2位を獲得した鳥羽商船高等専門学校にウエスタンデジタル賞が授与されました。

慣れ親しんだ三重県の縁由

グローバルでビジネスを展開しているわたしたちウエスタンデジタルは、SDカードやUSBメモリーに使われているフラッシュメモリーや、PCやデータセンターなどで利用されているハードディスクドライブ(HDD)製品の開発、生産を行う世界トップクラスのストレージメーカーです。約20年にわたって通算1兆7千億円を超える設備投資を行っていて、現在では外資系企業として国内トップクラスの投資額となっています。グローバルメーカーにとって、現在世界であまた選択肢のある開発拠点・工場立地の観点では、人件費や各種経費、物流コストを考えただけでも日本は必ずしもリーズナブルな環境ではないとされています。しかし日本が誇る「モノづくり」における「知見」「質」「精神性」など多彩で豊かな「代えがたい宝」がここにはあると考えています。
そのためわたしたちが世界中に供給するフラッシュメモリーの半導体工場がある三重県四日市市は、ウエスタンデジタルにとって非常に重要な拠点です。本年4月に開催されたDCON2021の本選に出場した学校の中で、四日市から伊勢湾沿いに南下した場所に位置する鳥羽商船高等専門学校(以下、鳥羽商船)に興味を抱くことは、自然な流れでした。

三重県四日市市にある半導体製造工場

より、リアルな事業体験、期待がもてる発表内容

鳥羽商船は、「ご近所さん」であること以上に重要な「地域の課題解決」の視点と「ソリューション技術」をもった見事なプレゼンテーションを展開されました。

「実践的技術者を育成する、進化する高専」というスローガンを掲げる同校からDCONに出場したチームは、「ezaki-lab」(エザキラボ)。以前から水産業に関わっているメンバーも擁しています。担当の先生の「エクセルを使うようなレベルでディープラーニングを使えるように」という教育方針は、「理系人材育成」にも注力するウエスタンデジタルにとって心強い言葉です。

チームの作品「NoRIoT」(ノリオーティ)は、地元三重県で盛んな海苔養殖で、生産者ごとの栽培能力に大きなバラつきがあることに着目しました。事実、三重県桑名地区では、高潮位なども影響して収穫量が前年比1割以下と記録的な不漁という年もありました。このソリューションとして、海苔養殖における、最適な干出時間となる養殖網の高さを提案するシステムを構築しました。海苔の品質向上と収量の増加・安定を実現するといいます。着眼点、課題解決のためのアイデア、イノベーション力の高さなどが伺えるものでした。

また、自ら開発したという潮位/水温測定用観測機 は優れたハード面の技術が見られます。
そしてこの機器から収集したデータと気象庁のデータを組み合わせてディープラーニングを行い、最適解を出すというアイデアと技術の組み合わせも秀逸です。同校は、物流の国際化と船舶の技術革新を目指して設立されており、海に縁深く、得意分野が開花したと言えるのではないでしょうか。

プレゼンテーションで注目されたのは、実際にヒアリングを実施したポテンシャルユーザーからプランに対する期待の声を動画で紹介した点でした。チームがこだわってやり取りを重ねたポイントであり、「これまでにない手法」との評価です。さらに、対象を海苔から他の養殖に展開し、ビジネス拡張の可能性にも言及。審査員からの複数の質問にも具体的かつ明解な回答で、会場を感嘆の空気で沸かせていました。

「地元企業へのヒアリングでも、いざやってみると質問の仕方が難しかった。自分の求める情報や意見を貰えるまで、ヒアリングの仕方を試行錯誤した」というチーム。技術開発のみならず、ビジネスとしてのブレイクスルーは、現場で働く人の日々の思考が重要であることを体感したようです。課題に取り組むことで、直接お礼を言われたりする経験も精神性に良い影響を与えるでしょう。また、「データ集めの作業に苦労した」という点では、ディープラーニングの発展の前に不可欠な「あらゆる分野におけるDX化」という課題が浮かびあがります。

いかなる環境でも自身の得手をいかし、アイデアを実現する努力を惜しまない彼ら。ウエスタンデジタルが掲げる「データの持つ力で社会的課題を解決する方法を創造する」というビジョンと共通する哲学を感じずにはいられません。私たちも大いに刺激を受けて、自らのミッションである「目先の利益をただ追うのではなく、豊かな社会をつくるために 『最先端のテクノロジーで社会をイノベーションする』」にまい進する姿勢を新たにしました。

ウエスタンデジタル賞授賞式の模様

【DCONブログご紹介】
第一話:全国高等専門学校から、AIを日本産業の力に ウエスタンデジタル、ディープラーニングコンテストに協賛
第三話: 最優秀賞受賞チーム「福井工業高等専門学校」
最終話: 総合3位受賞チーム「北九州工業高等専門学校」

【ご参考】
鳥羽商船高等専門学校ホームページ
鳥羽商船高等専門学校 江崎研究室「ezaki-lab」ホームページ
DCON2021(昨年度)ホームページ
DCON2022(今年度)ホームページ

戻る