2024年03月22日
よりスマートなデータとコネクテッドヘルスケアの新時代

ウエスタンデジタルの企業戦略部門でビジネスプロセス変革担当部署のシニアディレクターを務めるMike Verdugoは、データとストレージが人々の健康や幸せな生活の向上に寄与することについて情熱を注いでいます。彼は33歳のときインスリン依存性I型糖尿病と診断されました。それは彼の人生を変える出来事でした。

それ以来、Verdugoは血糖値を測るために、1日に何度も指先に針を刺して採血する必要がありました。技術が進化した今日では、コンピューター化されたインスリンポンプと血糖値センサーにより、自動化された方法で血糖値を管理できるようになり、指先に針を刺す回数は大幅に減りました。このポンプにはストレージが内蔵されており、Verdugoが血糖値の推移データにすぐアクセスできるだけでなく、ポンプと持続血糖モニター(CGM)/センサーで構成されるクローズドループシステムによって、血糖値やその他の重要なデータがクラウド経由で主治医にレポートされます。

「これらすべての情報がまさに手元にあるのです」とVerdugoは述べています。「私が診断を受けると、主治医は毎日24時間、5分ごとに記録されている私の血糖値を過去半年間分にわたり見ることができます。それにより主治医は、インスリンポンプのプログラムを変更する必要があるのか、食事や運動習慣を変える必要があるのか、あるいは炭水化物を過小評価していたり、インスリンの量が足りていないことを私に注意すべきなのかを判断することができます。血糖値の管理を改善し、最終的には糖尿病に関連した深刻な病気の発症を予防するために、主治医と私にあらゆる情報を与えてくれるのです」。

ヘルスケアデータをユーザーと医師の手元に近づける取り組みは、近年ますます主流になっています。Verdugoのインスリンポンプのような遠隔患者モニタリング(RPM)アプリケーションは、Internet of Medical Things(IoMT:医療IoT)と呼ばれる、急成長している新しいデバイスカテゴリーの一部です。

Insider Intelligence社の調査によると、RPMのユーザー数は2025年までに7,060万人に達し、2022年と比較すると56.5%増加すると予想されています。また、同社は今後3年間で米国人口の1/4以上が、何らかのモニタリングデバイスを使用するようになると予想しています。

ウェアラブルなモニタリングデバイスが身の回りに登場したことで、医療業界の状況は変貌しつつあります。

ヘルスモニタリングを普及させる

ウエスタンデジタルのリージョナルアカウントマネージャー、Doug McLoughlinは、ヘルスケア業界に15年以上携わってきました。現在、彼が担当している顧客企業のほとんどは、ウェアラブル、スマートヘルス、フィットネスアプリといった新興のIoTソリューションを導入しています。
McLoughlinによると、パンデミックは他の多くのオンラインアプリやデータを活用したアプリと共に、スマートヘルスアプリやフィットネスアプリの台頭に極めて大きな役割を果たしました。ジムが閉鎖されてしまったため、人々は活動的で健康的な生活を維持するために新たな方法を求めざるを得なくなりました。スマートウォッチやエアロバイク、ランニングマシンなどの家庭用フィットネス機器の需要が高まりました。ストリーミングやオンラインでのトレーニングプログラムを使ってアクティブに過ごす新しいライフスタイルが生まれ、人々は自宅で行うトレーニングの進捗状況を追跡するデータを望むようになりました。これら新しいアプリやデータの追跡機能を使用するためには、ユーザーの統計データを取得してレポートするための内蔵ストレージが必要でした。

「トレーニングマシンだけでなく、例えばエアロバイクのペダル回転数を計測するセンサーや、心拍数を計測するために腕や胸に装着するセンサーも必要です」とMcLoughlinは語っています。「こういった小さなフォームファクターのウェアラブルデバイスには、e.MMCと呼ばれる組み込み式のフラッシュメモリーがよく使われています」。

パンデミックによりデジタルホームフィットネスは利用者の拡大がみられましたが、現在はその増加曲線に変化がみられるとMcLoughlinは指摘しています。

「スマートフィットネスアプリの需要が横ばいになるにつれて、ウェアラブル市場は、もっと高度なヘルスケアデバイスへと拡大しています。」とMcLoughlinは述べています。彼によると、家庭用スマートピルディスペンサーもそうした新しいタイプのIoTデバイスだそうです。Verdugoのインスリンポンプと持続血糖センサーのように、このデバイスは高齢者に薬の服用を促すだけでなく、家族や医師がWiFiやBluetoothを介して薬の服用状況を確認することができます。

クラウド接続

よりスマートなヘルスケアの新時代では、データはあらゆる場所に組み込まれ、アプリケーションやクラウドを介して相互接続されます。データを保存することで、健康状態の傾向、変化、異常を認識して、新たな洞察を得ることができます。

データストレージは、その場にいない状況でもIoTデバイスを機能させる上で重要な役割を果たし、クラウドにおけるバックボーンとしても機能します。クラウドは、遠隔医療、高解像度画像デバイス、電子カルテ(EMR)など、ほとんどの医療アプリケーションで不可欠な要素となっており、さらに大容量のストレージと高速化のニーズをけん引しています。そして、より複雑且つ大量の患者データが保存され、分析可能になることで、病気の予測や乳がんの治療などにAIを活用する道が開かれるのです。

「クラウドソリューションにより、病院や医院のカルテを診るだけでなく、患者へ直接アクセスすることもできるようになります」とVerdugoは語っています。「患者データは非常に機密性が高いため、公共サービスを利用するよりも、病院の構内や別の安全な仮想プライベートクラウド経由で構築されたプライベートクラウドを利用することで、非常に安全で信頼性の高い方法で病院や医師にコンテンツを提供することが可能になります」。

「病院は、究極のクリティカルな事例となります」とVerdugoは強調しています。「これ以上に重要なアプリケーションは思いつきません。心臓切開手術中は、1分たりとも停電が起きてはならないのと同じように、誰かの命に関わることでは品質に一切の妥協は許されないので、世界で最も信頼性の高いストレージを用意する必要があるのです」。

どこでもヘルスケア

病院で提供されるクリティカルな医療や施術がなくなることは決してありませんが、一方で新時代の医療が到来しています。1世紀前、医者は患者の家に出向いて往診していました。ユニークなことに現在、医師たちは再び病院を(仮想的に)出て、オンラインによる遠隔医療を通じて患者に居心地のよい自宅にいながら高度な医療を提供しようとしているのです。
スマートデバイスは、患者や医者がどこにいても健康統計データを監視する機能をもたらし、クラウドは新たに相互接続された環境のバックボーンを提供します。患者の手元にあるモニター機器に搭載する場合も、病院の施設内に設置する場合でも、ヘルスケアアプリケーションは膨大な量のデータを取り込み、共有し、分析して保持するためのストレージが欠かせないのです。

Verdugoは、ネットワークやクラウドソリューションの開発に没頭していた前職時代からの医療業界を振り返り、ストレージ製品がクリティカルケアを提供する病院のニーズを満たすことができれば、どのようなケースであっても人々の幸せな生活をサポートできる十分な信頼性と性能が備わると断言しています。彼は日々行われている機能横断的なビジネスプロセスの改善を支援し、その結果、医療やその他の業界で必要とされている最高クラスのストレージ製品の提供に貢献することが、ウエスタンデジタルの社員としての自身の役割であると考えています。

そして患者としての彼は、デバイスに深い信頼を置いており、データインサイトを治療に活用できると確信しています。内蔵フラッシュストレージとクラウドが血糖値を追跡してくれるおかげで、体の変化を見逃すことはありません。

著者: Anne Herreria

※Western Digital BLOG 記事(MARCH 28, 2023)を翻訳して掲載しています。原文はこちら

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