2023年10月27日
デジタル時代の落とし穴:写真の復元の難しさ

多くの人々にとって、写真というものは所有している個人データの中でも極めて貴重なものです。靴箱に詰め込まれた汚れたポラロイド写真であろうと、高校時代に撮った粗い自撮り写真であろうと、写真にはそれ以上の価値があり、一コマ一コマが想い出に残る人生の絵となります。大切な写真を失うことが大きな悲しみをもたらすとすれば、もっと注意深く保護する必要があるでしょう。最近ではデジタルデータとして想い出をバックアップし、クラウドに保存している方が増えています。
しかし、すべてが思い通りにはいかないものです。いくら慎重に扱っても、ときにデータは破壊されたり失われたりします。個人の想い出がつまった写真が消えてしまうと、とても心が痛みます。お客様の写真を紛失すると、さらに大変なことになります。米国サンディエゴを拠点とする写真家Joy Portinga氏は、彼女のハードディスクドライブ(HDD)が故障したとき、とてもつらい思いをしました。彼女はデータの復旧作業で疲れ果てましたが、データを失うと、どのような事態になるかを強烈に思い知ったのです。最終的に情報は復元しましたが、残念ながら元のかたちとまったく同じというわけにはいきませんでした。

物理的な故障、精神的なダメージ

Portinga氏がフルタイムの写真ビジネスを起業したのは最近のことで、ウエスタンデジタル製ではない一般消費者向けのHDDを購入して業務に使用していました。家族旅行から戻ってドライブの写真を整理していたところ、突然PCがHDDを認識しなくなったのです。
ケーブルを替えてみたり、PCを交換したりしましたが、HDDから写真データを救い出す事はできず、恐怖に苛まれました。結局、ドライブの物理的な故障が致命傷となったのでした。
「そこから事態はさらに悪化していきました」とPortinga氏は語っています。唯一のバックアップソースであるクラウドのアカウントにアクセスできなくなっていることに愕然としました。その後、彼女はデータ復旧への一縷の望みを製造メーカーに託してHDDを送る以外に方法はありませんでした。
「そのメーカーは不可解な対応が目立ち、いつごろ状況が判明するか知らせてくれませんでした。いつになったらドライブを返してくれるのかも教えてくれなかったのです」とPortinga氏は、苛立たしかった当時を回想しています。

データライフのサポートと復旧

データ復旧作業は、データの種類によって異なるため、必ずしも同一ではありません。世の中にデータを修復して復旧する手法や復旧させるためのソフトウェアは数多く存在します。通常、問題の原因に従って最善のツールが選ばれます。また、サイバー攻撃にはHDDの物理的な障害とは異なるアプローチが必要です。それでも、一般的には4段階のプロセスになります。
まず、技術者が元のデバイスを修理します。内部のコンポーネントを修理する場合でも、デバイスエンジニアと連携して内部エラーを修正する場合でも、元のHDDの稼働容量は半減してしまいます。その後、ドライブのイメージを別のドライブにコピーします。こうすることで、さらなる障害によりデータが危険に曝されるのを防ぐことができます。
ドライブがイメージ化されると、ファイルの論理的復元を開始できます。これは、ビットを掘り起こして、失われたファイルや破損したファイルを見つけて復元し、すべてのデータを取得できるようにするという非常に骨の折れる作業です。データがすべて明らかになったら修復を開始します。
ウエスタンデジタルの製品品質および信頼性担当副社長であるMaureen Klattは、復旧プロセスはまさに共同作業だと考えています。ウエスタンデジタルの品質保証(QA)チームは独自のツールやソフトウェアを所有していますが、他社の組織とも協力して、可能な限りのユーザーデータ復旧に努めます。
「当社のQAチームは、この復旧作業の一端を担うツールとスクリプトを作成しました」とKlattはインタビューで答えています。「状態によっては、SAS、SATAなどのプライマリーインターフェイスはまだ使える場合があります。また、SIOポートが使えることもあります。しかし、ヘッドやプラッタがかなり損傷している場合は、サードパーティにドライブを送付して、思い切ったデータ復旧処置を施してもらうこと以外に方法はありません」。
全体としてHDDの故障率は低く修理方法も数多くありますが、完全な復旧が保証されることはありません。一部のファイルは永久に失われたままで、復元されたファイルでも永久に改変されたままの可能性があります。

事態を収拾する

神経をすり減らすような3か月を過ごした後、Portinga氏はついにハードディスクを復旧することができました。しかし、深刻な影響があったのです。すべての写真が復活できたわけではなく、なかには修復不能なほどダメージを受けたものもありました。破損したファイルは、フォトエディターで開くこともできず、復元された状態以上に修復しようとしても、厚い壁が立ちはだかりました。
不完全なレコードは複数ありましたが、Portinga氏は自分のデータの大部分が、多かれ少なかれ元の場所に留まっていたことに安堵しました。彼女は、今後を見据え責任を持って自分のデータを守り抜く決意を固めました。
「自分の仕事における事の重大さをはっきりと認識しました」と彼女は述べています。「私は写真家として、人々の生活のほんの一瞬を切り取っています。そして、それらを取り戻すことは本当に大切なことだったのです」。

データより深く

データ復旧にまつわる悪夢を乗り越えたPortinga氏は、現在では3種類のバックアップシステムを採用し、データを保護する厳格なワークフローを構築しています。彼女自身の習慣を改善することも重要ですが、この事例は、信頼性の高いストレージの重要性を改めて印象付けることになりました。ウエスタンデジタルのHDDテクノロジーエンジニアリング担当シニアディレクターであるPaul Peckは、インタビューでこの思いを訴えています。
「デジタルコンテンツは、私たちの生活のほぼすべての側面を網羅して進化しました」と彼は述べています。「情報の重要性を考えると、信頼性の高い安定したデータストレージが絶対に必要になります。だから私たちウエスタンデジタルは、品質に対する強い、本当に強いこだわりをもっているのです」。

著者: Thomas Ebrahimi
※Western Digital BLOG 記事(MARCH 28, 2022)を翻訳して掲載しています。原文はこちら

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