2023年03月24日
明日のデータを支えるテクノロジー: より堅牢なデータストレージ・エコシステムの構築に向け、ウエスタンデジタルとサムスンが協業

人工知能(AI)や機械学習(ML)、モノのインターネット(IoT)、エッジ、クラウドに端を発する革新的なデジタル技術とアプリケーションの普及により、私たちは日々、膨大な量の情報を生み出しています。そして今後数十年にわたり、デジタルストレージの需要は前例のないレベルで成長し続けることが予想されます。
データセンターなど、データを大規模に管理するお客様に、より高いストレージ効率と価値を提供するため、世界最大級のストレージプロバイダーであるサムスン電子とウエスタンデジタルはこのほど提携し、Zoned Storageなど次世代データ配置・処理・ファブリック(D2PF:Data Placement, Processing, Fabrics)ストレージ技術の標準化の先駆けとして協業を開始しました。
両社は、ハードウェアとソフトウェアをシステムスタック内で効率的に組み合わせるには、次世代ストレージ標準化を進めることが最も効果的だと考えています。そうすることでパフォーマンスと機能を最大化しながらコストを削減できます。このビジョンを達成するために、サムスンとウエスタンデジタルは、ストレージ業界の関係者間で幅広く協業することを奨励しています。両社は、この協業を通じてストレージ・エコシステムのベンダーを支援します。これによりベンダーは、現在と未来のデータワークロードを効率的に処理する新技術標準とシステムアーキテクチャに対応していることをお客様に表明することができます。

今日のデータインフラストラクチャが抱える現実

すでに私たちはゼタバイト(ZB)時代に突入しています。データがあまりにも膨大過ぎて、理解することはかつてないほど困難です。気が遠くなるほどのデータが生成される今日、喫緊の課題は、データセンターやクラウドインフラストラクチャの設計・運用方法を見直すことです。
このようなデータの劇的な膨張を背景にして、規格やシステムが断片化する危機が迫っています。それは、増大するストレージ需要に応えるエコシステムの取り組みを遅らせる要因にもなります。
サムスン電子のメモリーグローバルセールス&マーケティング担当バイスプレジデントであるCheolmin Park氏は、次のように述べています。「私たちはデータ消費、分析、ストレージの黄金時代を迎えました。しかし、業界各社が一貫性のないシステム実装や標準化をかってに進めると、この恩恵を享受することは叶いません。過去にあったAC対DCの電流戦争から、ベータマックス対VHSのビデオ戦争に至るまで、明確な標準化とフォーマットを欠いた業界は好機を逸し、無駄な出費を繰り返すことを歴史は教えてくれます。効果的な規格を採用することで、複雑性を最小化し、非効率性を排除し、製品やサービスのコストを削減することができ、ベンダーとエンドユーザーの双方に利益をもたらします。将来にわたってエンドユーザーのニーズを満たすデータストレージにするために、業界が今必要としているのは、Zoned Storageに関する幅広いコンセンサスです」。

Zoned Storageの将来に注目する

サムスンとウエスタンデジタルの協業の一環として、両社が最初に注力していることは、Zoned Storageを中心とした健全なエコシステムと堅実なアプリケーションサポート体制の構築です。
現在の大規模なデータインフラは、何万台ものソリッドステートドライブ(SSD)とハードディスクドライブ(HDD)に依存しています。こういった膨大なデータを管理する大規模システムでは、システムアーキテクチャやストレージデバイスのわずかに非効率なデータ配置でさえ、多大なコスト負担を被ることにつながります。
Zoned Storageは、オープンソースで標準ベースのイニシアチブで、データセンターのストレージインフラの効率的かつ効果的な拡張を可能にします。ZB規模のストレージが要求されるハイパースケールクラウドやエンタープライズベンダーにとって、Zoned Storageは資産の利用率を改善し、レイテンシーを低減し、コストを削減することに寄与します。
Zoned Storageは2つの技術で構成されています。HDDのShingled Magnetic Recording(SMR)と、SSDのZoned Namespaces(ZNS)です。Zoned Storageの中核を成すのは、ZNS SSDのようなデバイスです。これらのドライブは、アドレス空間を個別のゾーンに分割し、データを適切なゾーンに配置する機能をホストに搭載することで、ドライブアーキテクチャを合理化します。

データファーストの世界に向けた未来志向の技術

革新的なストレージソリューションとして、Zoned Storageには斬新なデータ書き込みルールが採用されています。すなわち、ゾーンの先頭からシーケンシャルに書き込むことしかできず、ゾーン内のデータの一部を自由に上書きすることはできません。そのため、ストレージシステムがZoned Storageの機能を適切に活用できるようにするホストソフトウェアスタックに対して、業界が連携して規格化することが極めて重要になります。このホストデバイスモデルの規格化が、イニシアチブ全体の重要なテーマとなっています。サムスン、ウエスタンデジタル、およびその他のエコシステムパートナーは、Zoned Storageがオープンソースコミュニティを通じて普及するように、必要なソフトウェアコンポーネントを提供することに力を注いでいます。
Zoned Storageをホストに実装すると、システムソフトウェアとハードウェアが同期して動作することで効率が大幅に改善します。ZNSは過剰なプロビジョニングを減らし、Quality of Service(QoS)のばらつきや、書き込み増幅度に関する問題を解消できます。その結果、デバイス密度が向上することで容量が増加し、容量をほとんど使い切った状態でもデバイスのパフォーマンスを維持することができます。さらに、ZNSはデータを絶えず書き換える必要がないため、従来のストレージ方式よりも耐久性に勝っています。
デバイスがSAS-SATA(HDDまたはSSD)であるか、NVMeTM SSDであるかにかかわらず、Zoned Storageは優れた効果を発揮し、システム全体のパフォーマンスをより効率的に管理できることから、あらゆるユーザーにメリットをもたらします。
ウエスタンデジタル戦略的イニシアチブ担当バイスプレジデントWim De Wispelaere氏(当時)は、次のように述べています。「Zoned Storageの実装と継続的な開発により、ストレージ業界はインテリジェントアーキテクチャの使用を通じて、コスト、レイテンシー、パフォーマンスのバランスを取ることができるようになります。業界として、近い将来、そして今後数十年を見据えて、可能な限りインテリジェントで効率的な方法を用いてデータストレージを牽引する技術とシステムを規格化すべき時期に来ているのです」。

すべての人々が恩恵を受ける

今回のサムスンとウエスタンデジタルの協業は、このデータ需要に応えるためには、ストレージ分野で極めて重要な新しい標準化が必要だという両社の信念を反映しています。
両社はすでに、ZNS SSDを含むZoned Storageデバイスに関する取り組みを開始しました。オープンでスケーラブルなデータセンターアーキテクチャを実現する取り組みの一環として、Zoned Storage Technical Work Groupを設立し、2021年12月にはSNIAの承認を得ました。さらに、Linux Foundationと協力して同様のプロジェクトワークグループを立ち上げています。これらの業界団体の中で、サムスンとウエスタンデジタルは、あらゆる革新的なZoned Storage技術のためのハイレベルなモデルやフレームワークの定義に尽力していきます。
ZNSは、革新的なデータセンターとクラウドサービスへの道を切り拓くために設計された、多数のD2PFコラボレーションの最初の技術です。サムスンとウエスタンデジタルは、データファーストの世界とそこにいるすべての人に適したストレージソリューションを生み出すために、主要なステークホルダーの間で緊密な協力関係を築くことをお約束します。

著者: Owen Lystrup
※Western Digital BLOG 記事(APRIL 19, 2022)を翻訳して掲載しています。原文はこちら

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