自動車メーカーは、未来の交通手段を変える可能性のある自動運転車に、進化したスマートテクノロジーを搭載し始めています。自動運転車が社会に組み込まれていくと、人々の日常生活での移動に革命をもたらし、未来の都市設計にも影響を及ぼす可能性があります。そこに至るまでの道のりは長いものですが、データストレージの革新がその道のりをナビゲートしてくれることでしょう。
自動車設計の最初のステップは、自動運転車のデータ要件を理解することです。内部のNANDストレージ、コントローラーチップ、ファームウェアがどのように連携して、車両システムの他の部分とデータを通信するかを見極めることが重要です。
ウエスタンデジタルのグローバルオートモーティブ部門でマーケティングディレクターを務めるラッセル・ルーベン（Russell Ruben）は、データストレージが自動車の設計にどのような影響を及ぼすかという質問に対し「車両の自律性を強化することができる」といいます。
「（自動車の設計において）ストレージの需要が急増しています。車両アプリケーションと接続数の増加に伴い、市場が一変しているのです」（ラッセル・ルーベン）。
ラッセルは、自動車用ストレージ分野に10年近く携わっており、組み込みNAND型フラッシュメモリーが自動車メーカーに高品質のソリューションと堅牢な信頼性を提供していると確信しています。
車両システムを設計する際には、データのワークロードを正確に計算することが重要になります。ストレージデバイスの耐久性は、書き込まれるデータ量に依存し、ストレージ容量によって変わります。すべてのデバイスには制約があるため、実際のシステムワークロードに基づいてデータ書き込み要件を決定することが重要です。
書き込み効率（WAF）もシステムワークロードの一部です。NANDストレージに書き込まれるデータの量は、時間の経過による耐久性と摩耗レベルを判断するのに役立ちます。したがって、ドライブのパフォーマンスを最適化するためには、WAFを理解することが重要になります。ラッセルによると、ほとんどの自動車メーカーにおける一般的なWAFの範囲は1.0～2.5であり、自動車グレードのNANDを車両設計プロセスの初期段階から組み込むことで、データのワークロードを最適に処理することができるとのことです。
自動運転車はいうなれば、車輪が付いたスーパーコンピューターなのです。内蔵されているさまざまなセンサー、カメラ、ネットワークによって、あらゆる事象をシームレスに検知することができます。他の車両や自転車、歩行者、あるいは道路標識など、道路上のさまざまなものを捉えることができます。
これらさまざまな情報を検知し、衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報装置などの安全機能に活用する「スマートカー」は、運転する人間よりも周囲の状況を鋭敏に把握します。
また、各種安全運転支援機能を複合的に装備し、自動運転を可能にする「自動運転車」は、より多くのデータを使用します。
先日、ラッセルはAutomotive World誌のウェビナーで講演を行い、自動運転車が利用するデータ量と、一般のインターネットユーザーが利用するデータ量を比較して説明しました。
「2020年、一般のインターネットユーザーは1.5ギガバイト（GB）のデータをやり取りしていた一方で、平均的な自動運転車は1日の移動で4,000GBものデータを処理しています」とラッセルは述べています。
つまり、1台の自動運転車は、平均的なインターネットユーザー約2,700人に匹敵するのです。
自動運転車は、さらに高度なカメラやセンサーでアップグレードされ、スマートな機能や技術を装備することで、さらに多くのデータを生成するようになります。
新たな一連のスマート機能は、ドライバーが道路上で安定した運転状況を維持できるよう支援します。信頼性の高いストレージデバイスにより、車線逸脱検知、リアビュー映像、衝突回避などの機能を実現することができます。さらに、メーカーから無線通信（OTA）ソフトウェアアップデートが配布されることで、新たな機能やアップデートを追加することができます。
自動パーキング機能を備えたり、完全に自動化されて無人で運転できる車両も登場するでしょう。
しかし、自動運転車を街中で普通に見かけるようになるには、もう少し時間がかかりそうです。
米国運輸省道路交通安全局（NHTSA）は、業界の現状と今後の影響を説明するために、レベル1（自動化なし）からレベル5（完全運転自動化）までのレベル体系を公開しています。
現在走行している自動運転車の大半はレベル2、つまり部分的に自動化されているか、それ以下です。そして、より高いレベルで社会に溶け込んでいくと、潜在的な経済効果が大きくなります。
米国では、多くの人にとって雇用や自立生活は車が運転できるかどうかに依存しています。自動運転車は、より多くの人々が仕事に就き、約200万人の障がい者に新たな雇用機会を創出します。
自動車のデータ技術が進化すると、その影響は自動車だけにとどまりません。まもなく道路や都市では、駐車場、道路建設、大量輸送に大きな変化が起こることが予想されます。
より多くのデジタルストレージを搭載した自動運転車が普及するにつれて、レベル3以上の自動運転が実現すれば、交通渋滞を緩和することができます。これは、道路開発や都市整備計画に多大な影響を与えます。
将来的には、ドライバーのいない車両が乗客を降ろして、次の客へと移動することもできるでしょう。そうなれば、これまで駐車場や巨大なガレージで占められていた土地は、住宅や公園、ショッピングセンターなど、より人間中心のニーズに置き換えることができます。
ラッセルは、人々が車を所有したくないと思う日が来ると考えています。「その代わりに、音楽や映画のストリーミングのように、シェアードドライビングサービスを利用できるようになるでしょう」。
また、自動運転車の走行性能が上がれば、車間距離が縮まり、自転車や歩行者のためのスペースを広げることもできるのです。
自動運転車の革命は、まだ始まったばかり。適切なNANDストレージを搭載することで、車両データのワークロードはバランスを維持することができ、人々の移動と生活体験を劇的に向上させます。近い将来、大きなパラダイムシフトが起こり、すべてがより良い方向に変わる可能性があるのです。
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著者：
David Silverberg
※Western Digital BLOG 記事（APRIL 14, 2021）を翻訳して掲載しています。原文はこちらから。
