2021年07月26日
ニューヨーク摩天楼を望む、眠らないプロジェクト

彼のリビングルームの左側に位置する窓には、デジタル一眼レフカメラが設置されており、ハドソン川の向こう側に広がるニューヨークの街並みを一望することができます。象徴的な水平線を撮影したカメラは、映像作家で写真家のジョセフ・ディジョバンナ(Joseph DiGiovanna)氏が制作した「NYC TimeScape(※1)」と呼ばれるタイムラプスプロジェクトで使用されています。このプロジェクトは、太陽が街の上に昇る1枚の写真から始まり、広大な街の風景を集めた数百万枚の写真集に成長しました。

ディジョバンナ氏は、タイムラプスプロジェクトとして30秒間隔でカメラで1枚ずつ撮影し、30年という期限を自分に課して、この悪名高いエンパイアシティの日々の変貌を切り取っています。撮影された各写真は彼のコンピュータに送られ、そこで処理されてウエスタンデジタルの外付ハードディスクドライブ(HDD)に保存されます。その後、彼はタイムラプスを編集して世界に発信しています。
既に5年を経過した今、ニューヨークの水平線の膨大な映像カレンダーが制作されており、サイトの訪問者は、スクロールして、誕生日やペットが来た日など、個人的な記念日の日の出と日の入りの写真を見つけることができます。

「このプロジェクトへの人々の関心度合いをみると、私はいつも興奮し、驚かされています」

NYC TimeScapeがきっかけとなって、オンラインで集まった人々が地球上のあらゆる場所で日の出や日没を楽しむという世界的なムーブメントが起きています。皆が「サンセットクラブ」と呼んでいます。ディジョバンナ氏が初めてInstagramでライブ放送をしたときは、何を期待してよいのか、また誰が見てくれるのかわかりませんでした。しかし、NYC TimeScapeがライブ配信されるたびに、世界中の人々がこの美しい瞬間を共有していることに、この上ない喜びを感じるようになったのです。

写真への情熱

ディジョバンナ氏は子供の頃から写真好きでした。写真はいつも彼の人生の一部でした。初めて写真に出会ったのは、父親が彼に古いカメラとフィルム2巻を与えてキャンプに行かせ、その様子を記録させたときでした。10代の頃は、叔父が叔母のためにタイムラプスビデオを作るのを手伝ったことで、タイムラプスに夢中になりました。

彼の映像への愛は、やがてフォトグラファーや映像作家としてのキャリアにつながり、世界的に有名な高級ブランド、画期的なブロードウェイのミュージカル、一流の著名人などのために、ファッションや舞台での演技の撮影を行ってきました。 (※2)

ディジョバンナ氏は、根っからの演劇好きです。小学校3年生の時に初めてブロードウェイのショーを見て、その後、舞台美術家や舞台監督になるための勉強をしました。彼にとって、ニューヨークの演劇界は常に特別な存在であり、彼の作品に多大な影響を与えています。

ディジョバンナ氏がソニア・タイエ(Sonya Tayeh)監督のために撮影した、フィリップ・ストロム(Philip Strom)氏の写真

「ブロードウェイのすべての劇場がタイムラプスショットに写っているのは偶然ではありません。これは私にとって魔法のようなものです」。

彼は着手するすべてのプロジェクトに高いハードルを課しています。カメラを携えて幅広いキャリアを積んできた彼は、自身のアパートの窓からの眺望が特別なものであることを確信していました。そこでニューヨークの水平線の驚異的な美しさを、一瞬たりとも逃すことなく撮影したいと考えました。そしてNYC TimeScapeのような大量の写真を生み出すプロジェクトでは、最適に処理できる最高品質の機材に信頼を置くようになったのです。

常に最適なツールを

ディジョバンナ氏は、自分の機材に対して合理的な考え方をしています。高性能で、信頼できて、時間の試練に耐えなければなりません。撮影監督として働く中で、交換可能なHDDを扱って大量の画像データを処理する経験を積むことができました。そして彼はいつもウエスタンデジタルを頼りにしていました。それは、初めてHDDを購入した高校時代にまで遡ります。NYC TimeScapeでは、WD Elements(※3)をはじめとするウエスタンデジタルの外付HDDが愛用のストレージソリューションとして使用されています。

「フォトグラファーとして、HDDはワークフローに不可欠な要素です。
信頼に基づいて構築されたウエスタンデジタルのドライブは正確に働いてくれます」

タイムラプスプロジェクトでは、1日当たり2,879枚の写真が撮影され、各画像ファイルの平均サイズは12MBになります。これは、1日に38GB、1週間に257GB、1年に16TBに相当します。現在の総画像数は約560万枚に上ります。

タイムラプスプロジェクトの画像データは、18台のHDDに分散して保存されており、それぞれにバックアップがあるため、合計で36台のドライブが使用されています。それらはニュージャージー州ウィーホーケンにあるディジョバンナ氏のアパートに保管されていますが、約半年ごとに満杯になってしまうようです。それらを交換するときは、アパートに何かあった場合に備えて、州外に住む母親にバックアップデータを送るようにしています。

世界が染まるとき

ディジョバンナ氏がNYC TimeScapeで目指しているのは、世界で最もフォトジェニックな水平線からの美しい日の出と日の入りを撮影し共有するというシンプルなものです。その過程で彼は、これらの写真が単に素敵な空の姿を記録しているだけでなく、ニューヨークや世界にとって記念すべき瞬間を記録していることに気づきました。

この眠らない街では、送電系統が不安定で、小規模な停電が起こります。しかし、2019年の夏に発生した停電は大規模で、マンハッタンの街が真っ暗闇になりました。ディジョバンナ氏のタイムラプスカメラはその瞬間をつぶさに捉えていました。その映像を見ようと、皆がサイトに殺到しました。一度にこれほど多くの人々に影響を与える出来事を目の当たりにするのは珍しいことです。この大停電のタイムラプスは、有名な朝のトークショーでも取り上げられ、彼の作品をより多くの聴衆に紹介することになりました。

また、NYC TimeScapeは、新型コロナによるパンデミックの中で、巨大な病院船USNSコンフォート(※4)の来港も目撃しました。USNSコンフォートの来港は衆目を集め、力強いニューヨークをリアルタイムに示すものでした。

「まさに絶望的な時期で、街は死にかかっていました。この船と沿岸警備隊のヘリコプターという、文字通りの艦隊がこの危機を救ってくれたのです。それは夢のような瞬間でした」

パンデミックの危機を乗り越えて、ディジョバンナ氏のタイムラプスプロジェクトは真の友情を育むコミュニティとなりました。屋内退避命令が出ている中で、世界中の人々が集まり、夜明けや夕暮れ、そしてその間のあらゆる瞬間の美しさを体験することができます。

ビッグアップルを超えて

NYC TimeScapeは、世界中で体験できる、象徴的な都市への共同の窓です。ディジョバンナ氏は、このプロジェクトを拡大し、世界中の都市にカメラを設置することを常に思い描いています。

「誰かにわかってもらえる場所ならどこにでも、わたしはカメラを置きたいと思います。」

今後、ディジョバンナ氏はプロジェクトを拡張して、東京、ロンドン、パリ、リオなどの都市に、日の出の素晴らしさと、夕日の荘厳さを捉えるカメラを設置したいと考えています。そしてテクノロジーが急速に進歩していることを考えると、この夢は彼が思っているよりも早く実現するかもしれません。

※1…NYC TimeScapeウェブサイトはこちら
※2…ジョセフ・ディジョバンナ氏の作品はこちら
※3…WD Elements製品の詳細はこちら
※4…USNSコンフォート来港時の動画はこちら

著者:Sophie Dillon David Silverberg
※Western Digital BLOG 記事(DECEMBER 14, 2020)を翻訳して掲載しています。原文はこちらから。

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