2021年06月25日
ポジティブな「不満」をイノベーションの糧に

Yan Liは、より多くの女性に特許を申請し、そしてイノベーションを推進して欲しいと願っています。

ウエスタンデジタルに22年間勤務し、材料工学の博士号を持つYan Li(ヤン・リー)は、214件の特許を取得しています。そんな彼女は、自身には反骨心があるといいます。
Yanは現在、メモリ技術の設計エンジニアリング担当バイスプレジデントですが、自らの手によるNAND型フラッシュメモリーにおけるさまざまな革新的な成果は、彼女が持つ、現状に対するポジティブな「不満」から生まれたものだと言います。

問題解決に注力

それが自分たちが発見した技術的な問題か、あるいはお客様が経験している問題かにかかわらず、その問題を特定し、そして真に理解することを中心とした考え方が、Yanにとって特許に結びつくアイデアを生み出す鍵となっています。
「問題を理解したら、ツールボックスを見て解決策を探り出します」と彼女は述べています。「従来の考え方では足りないことがよくあります。反骨心が芽生えるのはそのときです」。
オープンマインドでなければならない、とYanは言います。「既成概念にとらわれず、慣習を打破し、非現実的に見えるアイデアについて語り合い、それを推し進め、人からあまり良いアイデアではないと思われても、常に可能性のある解決策について考えるよう自分を駆り立てるのです」。
「Yanは、ウエスタンデジタルで最も成功しているイノベーターの1人です」と技術・戦略担当プレジデントのSiva Sivaram(シバ・シバラム)は述べています。「問題を理解し、解決策について従来の考え方に挑戦する彼女の能力は、私たちの技術コミュニティを刺激し、ウエスタンデジタルが市場をリードする画期的なブレークスルーを実現するのに役立っています」。

Yanと彼女の家族

女性によるイノベーションの推進

ウエスタンデジタルは、世界中で13,700件以上の特許を保有していますが、その強力なポートフォリオに貢献したYanの特許数は驚くべきものです。しかし彼女はまだ少数派です。
Yanは、多くの女性エンジニアが自分のアイデアを共有することに慎重になるきらいがあり、誰かがそのアイデアを受け入れるかどうかを心配し過ぎていると考えています。
「ここでも反骨心を持つべきでしょう」と彼女は述べています。「とにかく自分の考えを追求し、自分の考えに自信を持つこと。そのアイデアを仲間と共有します。そして、特許プロセスに移行します。何が起こるか見てみましょう。たとえ拒否されても、フィードバックを得ることでより良いアイデアに修正できるかもしれません」。
イノベーターにとって伝統への挑戦は避けられないことを忘れないように、とYanは言います。「従来のアプローチに挑戦し、問題解決のための新しい方法について深く考え、過去に行われたことから学び、データを収集し、創造的な反骨精神を持つのです。自分のアイデアが製品の機能を向上させていることがわかれば、大きな満足感が得られます」。
Yanによると、特許プロセス自体は非常に簡単だと言います。「アイデアはプレゼンテーションのスライドで提出できます。アイデアを説明するのに十分な情報が必要ですが、それ以上のものは必要ありません。特許チームは質問をすると共に、指導もしてくれます」。

どんなことでも可能だった時代

Yanは、1998年に当時のサンディスク(現:ウエスタンデジタル)に入社しました。「2000年にNAND型フラッシュメモリーの分野で東芝(当時)との協業を開始してから間もなく驚異的な成長の時期を迎え、そして今日に至ります」。
Yanは、自身の特許の中で最も重要な貢献は、NAND型フラッシュメモリーのスケーリングにおける厄介な問題である「干渉」に対処したものでした。「非常に狭い空間にできるだけ多くのメモリセルを詰め込みます」と彼女は言います。

「個々のフラッシュセルの間隔が狭くなるにつれて、隣接するメモリ間の『ノイズ』が増加します。干渉問題を解決するアルゴリズムを開発するまでは、高い信頼性は得られませんでした」

フラッシュメモリーは、メモリセルの微細化が進むにつれて、ノイズによる「外乱」の問題が大きくなっていった、とYanは指摘しています。「私たちは常に問題について話し合い、解決策をブレインストーミングし、お互いに挑戦し合い、既成概念を覆していきました。反骨精神が解決への道を切り開いてくれたのです」。
彼女は、2008年に業界初の3層セル(TLC)の開発に貢献したことを最も誇りに思っています。「多くの新しいアイデアを製品に取り入れ、最初のチップで生産体制に移ることができました。この製品は当社のビジネスに大きな影響を与え、やがてサンディスクの2D NAND型フラッシュメモリー製品の多くがTLCを採用するようになったのです」。
「多くの人が、問題を解決する方法は1つしかないと思い込んでいる」と彼女は述べています。「それは、イノベーションのアプローチとしては絶対に間違っています。まず、非実用的なものから始めて、より実用的なものになるよう磨きをかけていくのです」。

著者:Sophie Dillon Kevin O’Connor
※Western Digital BLOG 記事(SEPTEMBER 3, 2020)を翻訳して掲載しています。原文はこちらから。

参考:ウエスタンデジタル「ダイバーシティ:女性の活躍推進」インタビュー記事はこちら

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